最近、「フェムテック」という言葉をテレビや雑誌でよく見かけませんか？ なんとなく「女性向けの何かかな？」とは思っていても、フェムテックとは一体何なのか、簡単に説明するのは少し難しいかもしれません。
フェムテックとフェムケアの違いがよくわからなかったり、具体的にどんな商品やサービスがあるのか、市場規模はどれくらいで、どんな企業が参入しているのか、知りたいことも多いですよね。
この記事では、そんなフェムテックに関するさまざまな疑問について、私と一緒に基本からチェックしていきましょう。
記事のポイント
- フェムテックの基本的な意味とフェムケアとの違い
- 今、世界的に注目されている背景と市場の成長性
- 【カテゴリ別】フェムテックの具体的なサービスや商品例
- 知っておきたいフェムテックの課題と今後の可能性
フェムテック（Femtech）とは？
まずは、「フェムテック」という言葉の基本的な意味から見ていきましょう。言葉の定義や、よく似た「フェムケア」との違いを知るだけで、ぐっと理解が深まると思います。
フェムテックの基本的な定義
フェムテック（Femtech）とは、「Female（女性）」と「Technology（テクノロジー）」を組み合わせた造語です。
簡単に言うと、月経（生理）や妊娠・不妊、更年期障害といった、女性特有の健康課題をテクノロジーの力で解決する製品やサービスのことを指します。
これまでは、こうした女性の悩みは「我慢するもの」「あまり公の場で話すべきではない」といった雰囲気があったかもしれません。
でも、テクノロジーの進化によって、例えばスマホアプリで簡単に生理周期を管理できたり、オンラインで専門家に相談できたりと、より便利で快適な解決策がたくさん登場してきたんですね。
「フェムテック」と「フェムケア」の決定的な違い
フェムテックと一緒によく聞く言葉に「フェムケア（Femcare）」があります。この2つ、似ているようで実は明確な違いがあるんです。
こんな風に、「テクノロジーが使われているかどうか」が大きな判断基準になりますね。
もちろん、フェムケア製品である吸水ショーツに、快適性を高めるための最新技術（テクノロジー）が使われている場合もあるので、境界線が曖昧な部分もあります。
フェムケアは、女性のQOL（生活の質）を高めるための幅広いアイテムを指す言葉として、フェムテックと一緒に覚えておくといいかなと思います。
フェムケアについてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひ読んでみてくださいね。
なぜ今、フェムテックが世界中で注目されているの？
ここ数年で、日本でも「新語・流行語大賞」にノミネートされるほど注目を集めているフェムテック。どうしてこんなに急速に広まっているんでしょうか？ その背景には、大きく分けて2つの理由があるようです。
背景①：女性特有の健康課題による経済的損失
実は、女性特有の健康課題が社会全体に与える経済的なインパクトは、私たちが想像する以上に大きいんです。
例えば、生理痛やPMS（月経前症候群）、更年期障害などが原因で、仕事のパフォーマンスが落ちてしまったり、思うように働けなかったり、場合によっては離職を選ばざるを得ないケースもあります。
経済産業省の調査では、こうした女性特有の健康課題による日本国内の経済損失は、年間で約3.4兆円にも上ると試算されているそうです。
あくまで特定の調査による試算データですが、月経症状による労働損失だけでも年間約4,900億円に達するという推計もあり、これが企業や社会にとって大きな問題だと認識され始めたんですね。
女性の社会進出が進む中で、こうした課題を解決することが、企業にとっても社会にとっても重要だ！という意識が高まったことが、フェムテックが注目される大きな理由の一つです。
背景②：社会意識の変化とタブーの解消
もう一つの理由は、社会全体の意識の変化です。
ひと昔前までは、生理や更年期の悩みは「個人的なこと」として、あまりオープンに話せる雰囲気ではありませんでした。
でも、SNSの普及によって、同じ悩みを持つ女性同士が情報交換をしたり、声を上げたりしやすくなったことで、そうした悩みが「みんなが抱える共通の課題」として見えるようになってきたんです。
さらに、SDGs（持続可能な開発目標）などで「ジェンダー平等」への関心が高まったことも追い風になっています。
「女性が健康的に、自分らしく働ける社会を目指そう」という流れの中で、タブー視されてきた女性の健康課題に、テクノロジーでアプローチするフェムテックが、まさに「待望の解決策」として期待されているんです。
フェムテックの市場規模と成長性
社会的な注目度だけでなく、フェムテックはビジネスの面でも「急成長市場」として期待されています。世界と日本、それぞれの市場がどれくらいの規模感なのか、少し見てみましょう。
世界市場の急速な拡大
世界的に見ると、フェムテック市場はものすごいスピードで成長しています。
調査会社によって予測の数字はさまざまですが、ある予測では、2025年までに市場規模が5兆円規模になるとも言われていましたし、2030年代にはさらに大きな市場（数十兆円規模）に成長すると予測するレポートもあります。
特にアメリカ（北米）が市場をリードしていて、スタートアップ企業への投資も活発に行われているようです。アジア太平洋地域も、日本や中国、韓国などを中心に急速に成長しているエリアだと言われています。
日本国内の市場動向
一方、日本の市場はというと、世界と比べるとまだ「黎明期（れいめいき）」、つまり始まったばかりの段階かもしれません。
それでも、2022年のフェムケア＆フェムテック市場は約695億円、2023年には約750億円と推計（※あくまで調査機関による推計値です）されており、着実に成長していることがわかります。
日本でも、スタートアップ企業はもちろん、大手企業が社員の福利厚生としてフェムテックサービスを導入する動きが活発になっています。「健康経営」の一環として、女性従業員の働きやすさをサポートする重要性が認識されてきている証拠ですね。
【カテゴリ別】フェムテックの具体的なサービス・商品例
「フェムテックがすごいのはわかったけど、具体的にはどんなものがあるの？」と思いますよね。ここで、フェムテックの代表的なカテゴリと、具体的なサービスや商品の例をいくつか紹介します。
① 月経・生理管理
これは一番イメージしやすいカテゴリかもしれません。生理周期や排卵日、PMS（月経前症候群）の時期などを予測・管理してくれるスマホアプリが代表的です。
② 妊活・不妊治療サポート
妊活や不妊治療は、精神的にも身体的にも、そして金銭的にも負担が大きい分野です。ここにもテクノロジーのサポートが入ってきています。
妊活や不妊治療に関する悩みは、デリケートで人に相談しにくいからこそ、オンラインで専門家のサポートを受けられるのは心強いですよね。
③ 妊娠・産後ケア
妊娠中や産後の不安定な時期をサポートするサービスも充実してきています。
④ 更年期管理
40代～50代にかけて多くの女性が経験する更年期。ほてり（ホットフラッシュ）や気分の落ち込みなど、症状は人それぞれです。この世代をサポートするフェムテックも増えています。
更年期は「いつか終わるもの」と我慢しがちだったかもしれませんが、アプリなどで客観的に自分の状態を把握できると、対策もしやすくなりそうですね。
⑤ セクシャルウェルネス（セルフプレジャー）
日本ではまだオープンに語られることが少ない分野かもしれませんが、「セクシャルウェルネス（性の健康）」もフェムテックの重要なカテゴリの一つです。
これには、女性向けのセルフプレジャー（セルフラブ）アイテムも含まれます。単なる快楽のためというよりは、リラクゼーションや自分自身の身体を知るためのセルフケアツールとして、デザイン性や機能性、安全な素材にこだわった高品質な製品が登場しています。
知っておきたいフェムテックの課題
急速に成長しているフェムテックですが、手放しで喜んでばかりもいられない、いくつかの課題も指摘されています。使う側としても、知っておきたいポイントです。
プライバシーとデータセキュリティの懸念
フェムテックのサービス、特にアプリは、私たちの非常にデリケートな健康情報を扱います。
これらの極めてプライベートなデータが、どのように管理され、誰に共有される可能性があるのかは、大きな懸念点です。
海外では、ユーザーの健康情報が本人の同意なく第三者（例えばFacebookなどのSNS企業）と共有されていたことが問題になった事例も報告されています。
日本でも、医療情報に関する法規制（HIPAAのような）が、一部のフェムテックアプリには直接適用されないケースもあると言われています。
サービスを利用する際は、プライバシーポリシーをしっかり確認したり、信頼できる企業が提供しているかを見極めたりする視点も大切になりそうです。
規制や認知度の問題
医療機器に近い機能を持つ製品や診断アプリなどは、国の厳格な規制をクリアする必要があり、市場に出るまでに時間がかかる場合があります。
また、いくら便利なサービスがあっても、それを必要としている人たちに情報が届かなければ意味がありません。特にデジタルツールに慣れていない世代や地域によっては、まだまだフェムテックの認知度が低いという課題もあります。
フェムテックのアプリやサービスは、あくまで健康管理をサポートするツールです。体調に不安がある場合や、医学的な判断が必要な場合は、自己判断せずに必ず医療機関を受診し、医師や専門家に相談してくださいね。
まとめ：フェムテックが拓く女性の未来
今回は、「フェムテックとは？」という基本から、市場の動向、具体的なサービス例、そして課題まで、幅広く見てきました。
フェムテックは、女性が自分の身体や健康としっかり向き合い、ライフステージが変化してもキャリアや自分らしい生活を諦めなくて済むようにサポートしてくれる、とても心強い味方だなと私は感じています。
プライバシーなどの課題には注意しつつも、こうしたテクノロジーを賢く活用することで、私たち女性の生活はもっと快適で、可能性に満ちたものになっていくんじゃないかなと、とてもワクワクしています。
