更年期の「乾燥」対策｜フェムケアで始める保湿習慣

更年期に差し掛かってから、デリケートゾーンが乾燥してカサつく感じ、ありませんか？ 顔や手足の保湿はしっかりしていても、デリケートゾーンのケアはつい後回しにしがちかもしれません。

でも、この乾燥を放っておくと、乾燥によるかゆみやヒリヒリとした痛み、さらには性交時痛といった不快感につながることも…。これらは「萎縮性腟炎（GSM）」と呼ばれる、エストロゲンの減少が引き起こす症状かもしれません。

「どうやってケアすればいいの？」「保湿って何をすれば？」そんな疑問を持つ方も多いと思います。

この記事では、なぜ更年期に乾燥が起きるのか、そして私たちが今日から始められるフェムケア、特にデリケートゾーンの潤いを保つための具体的な保湿対策について、一緒に見ていきたいと思います。

記事のポイント

• 更年期にデリケートゾーンが乾燥する医学的な理由
• 乾燥を放置した場合に起こり得るトラブル
• 今日から実践できる正しいフェムケア（洗浄と保湿）
• 症状が辛いときの医療機関での対処法

更年期の乾燥、なぜ起こるの？

まずは、なぜこの時期に急に乾燥が気になるようになるのか、その原因をしっかり知っておきましょう。これ、実は女性ホルモンが大きく関係しているんです。

原因は「エストロゲン」の急激な減少

私たち女性の体は、女性ホルモン（特にエストロゲン）によって守られています。エストロゲンは、膣の弾力性や保水性、粘膜の厚さをキープする、とっても重要な役割を担っているんです。

でも、一般的に45歳から55歳頃の更年期に入ると、卵巣の機能が低下して、このエストロゲンの分泌がガクッと減ってしまいます。

その結果、どうなるかというと…。

• 膣の壁が薄くなる
• コラーゲンが減少する
• 膣内膜の水分保持機能が低下する

これが、膣の乾燥や萎縮（膣萎縮）の正体です。お肌がカサカサになるのと同じように、デリケートゾーンも潤いが失われてしまうんですね。

乾燥が引き起こす主な症状

ただ乾燥するだけじゃなく、生活に影響が出るような様々な症状を引き起こすこともあります。

経済産業省の調査では、更年期の症状で仕事のパフォーマンスが半分以下になると答えた女性が約半数もいるそうです。これはもう、個人の悩みじゃなくて、社会的な問題ですよね。

その乾燥、放置しても大丈夫？

「ただの乾燥でしょ」「年だから仕方ない」と見過ごしがちですが、デリケートゾーンの乾燥は、放置すると色々なトラブルを引き起こす可能性があるんです。

膣の「自浄作用」の低下

健康な膣内は、pH4.0前後の弱酸性に保たれています。これは「デーデルライン桿菌」という善玉菌のおかげで、この善玉菌が膣内を酸性に保ち、悪い菌が増えるのを防いでくれているんです。これが、膣の「自浄作用」です。

しかし、更年期に乾燥が進むと、このpHバランスが崩れてアルカリ性に傾きがちに。そうすると、善玉菌が住みにくい環境になってしまい、自浄作用が弱まってしまうんです。

感染症リスクの増加と「におい」

自浄作用が低下すると、どうなるでしょう？

そう、雑菌が増殖しやすくなってしまいます。

カンジダなどの真菌感染や細菌性膣症など、不快な感染症のリスクが高まります。さらに、雑菌が増えることで、おりものの悪臭、いわゆる「におい」の原因にもなってしまうんです。

乾燥対策は、単に不快感をなくすだけでなく、膣の健康を守るためにもすごく大切なんですね。

今日から始める！乾燥対策フェムケア

原因がわかったところで、次は具体的な対策です。毎日のちょっとした習慣で、不快感を大きく改善できるかもしれませんよ。フェムケアの基本は「洗浄」と「保湿」です！

基本のキ「正しい洗浄方法」

デリケートゾーンケアの第一歩は、洗い方から。つい、ゴシゴシ洗いすぎちゃう傾向があるかもしれません。

最重要！「入浴直後の保湿ケア」

顔を洗ったら、すぐに化粧水をつけますよね？ デリケートゾーンも同じ、いえ、それ以上なんです。

実は、膣の粘膜には角質層がありません。だから、お肌よりもずっと乾燥しやすく、バリア機能も弱いんです。

お風呂上がりは、最優先で保湿！ タオルで水分を軽く押さえるように拭いたら、間髪入れずに保湿剤を塗布する習慣をつけましょう。

膣内もOK？「オイル・ジェル」の選び方

専用の保湿剤には、オイルタイプやジェルタイプなど色々あります。それぞれの特徴を知って、自分に合うものを見つけたいですね。

セサミオイル（ごま油）

最近注目されているのが「セサミオイル」です。アーユルヴェーダでも古くから使われてきたそうで、高い抗酸化力を持つ「ゴマリグナン」や「トコトリエノール」が含まれているのが特徴です。

これらが組み合わさると「スーパービタミンE」とも呼ばれ、肌を守りながら潤いを届けてくれるんだとか。

市場には「fuwari」や「LIVING-OIL DELICATE」など、セサミオイルをベースにしたフェムケア専用オイルがたくさん出ています。清潔な手で外陰部に優しくなじませたり、製品によっては膣内を優しくマッサージしたりして使います。（※使用方法は必ず製品の説明書に従ってくださいね！）

ホホバオイルや白色ワセリン

もっとシンプルなケアが好みなら、「ホホバオイル」もおすすめです。人の皮脂に成分がとても近い（ワックスエステル）ため、刺激が少なく保湿に適しています。

また、症状が強くてヒリヒリする時には「白色ワセリン」も有効です。ワセリンは水分を補うものではなく、皮膚の上に「フタ」をして、損傷した皮膚を外部の刺激から守るバリアの役割を果たしてくれます。保湿剤を塗った上から重ねてフタをする、という使い方もできますよ。

体の内側から潤う「生活習慣」

外からのケアと同時に、内側からのケアもやっぱり大事。特に「水分補給」と「食事」です。

膣の血流アップ「骨盤底筋トレーニング」

更年期は、尿漏れも気になりだす時期…。これは「骨盤底筋」という筋肉が緩むことも原因の一つです。

この骨盤底筋を鍛える「ケーゲル体操」は、尿漏れ対策だけでなく、膣への血流を増やして弾力性を高め、乾燥や萎縮の予防にも役立つと言われています。

性交痛がある場合の対処法

乾燥が原因で、パートナーシップに影響が出る「性交痛」も深刻な悩みですよね。我慢しないで、適切なアイテムを使いましょう。

「潤滑剤」と「保湿剤」は別物です

ここで知っておきたいのが、「潤滑剤（ルブリカント）」と「保湿剤」の違いです。

• 潤滑剤：性交時の摩擦を減らし、「その時の痛み」を和らげるために使います。一時的なサポートアイテムです。
• 保湿剤：日常的に使い続けることで、膣の内膜自体をコーティング・保護し、「膣の潤う力」を改善していくものです。

性交痛がある場合は、まず潤滑剤をしっかり使うこと。そして、それと並行して日常的に保湿剤でケアし、膣そのものの状態を良くしていくことが大切です。

パートナーとの協力とケア

痛みがある時は、パートナーの協力も不可欠です。潤滑剤を十分に使うこと、そして乾燥で傷つきやすい時期は、感染予防のためにもコンドームを使ってもらうことが推奨されます。

性交渉の後は、付着したものを拭くか洗い流し、その後にしっかり保湿ケアをしてから休むことも大切ですよ。

症状が辛い時は婦人科受診も選択肢に

セルフケアを頑張っても改善しない時や、おりものに異常（黄色い、悪臭がする）がある、排尿時に痛みがあるなど、症状が日常生活に支障をきたす場合は、絶対に我慢しないで専門家を頼ってください。

婦人科で相談できること

婦人科に行くのは勇気がいるかもしれませんが、更年期の乾燥は多くの女性が経験する「症状」です。いつから、どんな症状があるのかを整理して、お医者さんに相談してみましょう。

適切な診断を受けることで、自分に合った治療法が見つかります。

主な医学的治療法

医療機関では、セルフケアよりも一歩進んだ治療が受けられます。

代表的なのが「ホルモン補充療法（HRT）」です。特に「エストリオール膣錠」という低用量のエストロゲン製剤は、飲み薬や貼り薬と違って、作用が膣の局所に限定されるため、全身への影響が少ないと言われています。

これは、単に潤滑剤で滑りを良くするのではなく、膣粘膜そのものを再生させ、コラーゲンを増やし、膣の自浄作用を回復させることを目指す治療です。

ほかにも、レーザーで膣内のコラーゲン再生を促す「スターフォーマー」のような最新治療や、ヒアルロン酸注入など、色々な選択肢が出てきています。

これらの治療法は、すべて医師の診断と処方が必要です。自分に合うかどうか、メリットやデメリット（副作用など）も含めて、必ず婦人科の専門医にご相談ください。この記事で提供する情報は一般的なものであり、医学的なアドバイスに代わるものではありません。最終的な判断はご自身の責任において、専門家と相談の上で行ってください。

まとめ

更年期のデリケートゾーンの乾燥は、エストロゲンの減少という、女性なら誰にでも起こり得る体の変化が原因です。

「恥ずかしい」「年だから」と一人で抱え込まず、まずは「正しい洗浄」と「専用アイテムでの保湿」というフェムケアを始めてみませんか？

そして、セサミオイルなどの植物の力を借りたり、生活習慣を見直したりすることで、不快感が和らぐこともたくさんあります。

それでも辛い時は、我慢しないで婦人科を受診してください。適切な治療で驚くほど快適になることもあります。

閉経後も続くこれからの長い人生を、もっと快適に、自分らしく過ごすために。今からデリケートゾーンを大切にする習慣、一緒に続けていきましょうね。